フォルテピアノ奏者 丹野めぐみ BLOG。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業後、オランダ初めヨーロッパ各地にて研鑽を積み、同地にて活躍。現在オランダでもっとも権威ある「De Nederlandse Opera」のメンバーとして参加、また「Amsterdam Barok Opera」にて活動の場を広げるとともに、ヨーロッパを中心に、室内楽とドイツリートの分野で精力的な活動を行なっている。

演奏会前のティータイム(2) 祈りの調べ

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 ふう~~、今日も、品川でリコーダー奏者のRちゃんと5年ぶりにちゃんとトーク。元気をいただいてから、新橋。三徳堂に入るやいなや、共通の知人がいる方に遭遇!すっかり意気投合。その後もまた他の方とお知り合いになれて、コンサートのチケットをいただいたり。。まあ、時間があっという間にすぎて、上野へ。そう、今日はやっと大学の先輩である小島夕季さんのジャワ舞踊をみることができたのであります!ガムランの優雅で幻想的な響きに導かれ、低音高音自在な歌が入り混じり、そこにルバーブの不思議な旋律が登場するという、なんともいえないいろいろな音の混合で、それはきっと「万華鏡」にたとえたら一番わかりやすいかな。
 小島さんの優雅で力強く、ピタっと静止した動きに、首から上のなんともいえない動き。手の先まで洗練されて無駄がなく、それでいて、艶かしい。西洋人にはない動きと色っぽさに、もう感動の拍手喝采を送りました。また演出もすごく素敵で、始まりも5時からだったのですが、上野水上音楽堂に静かに夕暮れが訪れ、そこに鈴虫の声が響き渡り、水面が揺れ、また踊り手の衣装からすこしづつ落ちてくる花びらはやがて一面に広がってなんともいえない、この世の感じじゃないムードが漂っていました!
 小島さんの踊ったあとのコメントで、「踊ったあとで頭が真っ白なのでお話するのが。。」とおっしゃっていた時に、ハッと思ったのであります。プログラムノートにもありましたが、ジャワの踊りの根幹はきっと、「祈り」の音楽。自分というものをすでに忘れ、宇宙とつながる「媒体」として、天空に自我を放っていく。この儀礼舞踏を通して「祈り」の気持ちを鍛錬していく、自分がまず空になり、そして媒体としてつながった時、きっと「よい気」をあたりに満たすことができる。この「気」が邪気を清め、宮廷、ひいては世界を平安に導いてゆく。。

  さてそこで、今度のコンサートでお聴きいただきます、モーツァルトの「幻想曲KV608」の中間部にあるアンダンテを思い出したのであります。
  この曲自体は、モーツァルトに死の影が忍び寄る最晩年の1791年に作曲されたものですが、モーツァルトの親交の深かったダイム伯爵が、1790年に他界したオーストリアの国家的英雄を追悼して、一風変わった時計仕掛けの自動オルガンを作り、それに夢中になったモーツァルトがそのオルガン用に3曲、作曲したのであります。そのうち最も内容の濃いのがこのKV608で、荘厳なヘ短調という重々しい雰囲気で始まるのですが、平行調の変イ長調の甘い調べが中間部にでてきます。でもそれは単に甘いという言葉では言い表せない、モーツァルトの過ぎ去った日々を思うせつなさ、そしてそれがもうすぐ天上のものになってしまうという、それをすでに想定して、なんなく受け入れてしまっているモーツァルトの、心の平安を歌った調べであることに、今日のジャワ音楽を聴いてピーンときたのです。ガムランが奏でた音の根源といっしょで、やはり古今東西、最終的には「祈り」に行き着くのだなと納得したのであります。
 ちなみに、この曲はアントニオ君がプリモです。(昨日登場したワードですね!)つまり彼が、この究極のメロディーをつむいでいくことになります!乞うご期待!

 

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