フォルテピアノ奏者 丹野めぐみ BLOG。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業後、オランダ初めヨーロッパ各地にて研鑽を積み、同地にて活躍。現在オランダでもっとも権威ある「De Nederlandse Opera」のメンバーとして参加、また「Amsterdam Barok Opera」にて活動の場を広げるとともに、ヨーロッパを中心に、室内楽とドイツリートの分野で精力的な活動を行なっている。

演奏会前のティータイム(1) "ヴァルター?"

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 ご無沙汰してしまいました!第一夜のコンサートのカウントダウンをしながらも、まあ、あっちへいったりこっちへいったり。いろいろな方に出会いながら、人生の妙をエンジョイしつつ、練習につかれてアロマ・マッサージを受けたり、スタンリー先生を成田へお迎えにいったり。。今日は太極拳に挑戦!(実はオランダでやったことがあるんです)やはり心なしか心が軽くなるというか、気分が晴れるというか、普段の自分の姿勢にもすぐ影響するんで、すばらしい!一人で続けてってわけにはいかないので、日本にいる間はなるべく通いたいなと。あと、北京好きなのでぜひ一度早朝の公園で地元の方に溶け込みつつゆっくりと身体を動かしてみたいものです!そのあとは中国茶!
   
 意識を現実に戻しつつ。。今度の2回の演奏会は、私がめったにやらない「ソロ」、そして大好きな「ドイツ・リート」の音楽をやってみます。私は自分のことを基本的には室内楽気質だと思っていて、人と協力しあって自分の持ち前が生かされるのではないかと、音楽を始めてから一貫した気持ちで続けています。でも今回は、自分がフォルテピアノを始めて10年が経ち、ひとつの区切りとしてチャレンジしたいなと。自分がなぜフォルテピアノに出会ったのか、またそのきっかけはこの「ドイツ・リート」というジャンルとの出会いにあります。大学にはっいてすぐの5月、巨匠エリー・アメリングが大学でマスタークラスをやっていて、それを見たときの衝撃と決意。自分は歌い手にはなれないけど、歌のそばにいる人生を選択することはできる!と思ったのです。

 そのときにふと思ったのは、やはり人間の声というものはとても繊細で、それを支えたり、補ったり、息が楽にできるように流れをもっていたりする、そういうことが、「ピアノ」だとどうしてもまずは歌との音量のバランスという点に着目しなければならず、ピアノ奏者は=「ドイツ・リート伴奏者」という肩書きがつくわけですが、本当にそうなのかな?って思ったのがこのジャンルにハマッタきっかけです。もちろん歴史の偉大な「ドイツ・リート」ピアニストというのはたくさんいて、その方たちがやってきた数々のレコーディングは本当にすばらしいです。ただ、自分がおもっている?に回答を与えてくれたのは、私の場合は「フォルテピアノでやってみる」という視点からの挑戦でした。

 普段に目にするピアノは基本的には1850以降に発明されたものです。ピアノの歴史を約300年と考えると、1700-1850年の間に生まれたピアノは、本当に時代や地域によって一台一台顔が違う作品でした。歌曲王シューベルト(1797-1828)は生粋のウィーン子で、短い生涯の間に600曲以上のリート(ドイツ語で「歌」)を書いたわけですが、その時に使われいたのは当然当時のピアノ(私達の目線で遡れば「歴史的ピアノ」または「フォルテピアノ」と呼びます)だったわけです。

 今回の演奏会で用いる楽器はプログラミング上、シューベルトよりも少し前の「ヴァルター・モデル」と呼ばれているものです。アントン・ヴァルター(1752-1826)は、当時のウィーンで最も成功したピアノ製作者のうちの一人です。モーツァルト(1756-1791)は、有名な「モーツァルトの手紙」の中で、ヨハン・アンドレアス・シュタイン(1728-1792)のピアノを1777年に誉めていますが、数年後の1782もしくは1783に「ヴァルター」のピアノを購入していることがわかっており、ヴァルターのピアノが持つ柔らかい音色、音質や音量の微妙なさじ加減ができること、また現代のピアノにはついていない「モデレーター」という機能、これは「膝ペダル」(鍵盤の下にペダルが2つ操作できる機能がついている。ひとつは「ダンパー・ペダル」であり、もうひとつが「モデレーター」)を踏むと(ひざで押し上げると)弦の下にフェルトがサッと登場し、音色を柔らかく、かつ小さく変えることができます。楽器のあり方そのものが、当時のヨーロッパの美意識を現していたといっても過言ではありません。

 そのような楽器を現代の楽器製作者たちは研究し、「コピー」としてこの世に送り出しているわけです。なので「~(誰々)製作の「シュタイン・モデル」というような紹介がされているわけです。
  

 そのようなピアノととも、今回はハーグでご一緒したバス・バリトンの三浦英治さんをお迎えして、「ドイツ・リート」やります。彼の深い聴き応えのある声(癒し系)と、ヴァルター・モデルのもつ温かさ-これらがうまくからんだときに、「伴奏者」としてではなく「共演者」として、「ドイツ・リート」の世界を楽しめる自分が存在できるような気がします。

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