今日から歌手の三浦さんとリハーサル!ああ~おもしろかった!わからないドイツ語の言い回しとかを丁寧に教えていただき、また自分が練習して思ったことなど、舌足らずの私をよく理解していただき、とても有意義な時間でした。またやっていてわかってくるってこともあるし、ピアノがうたの人の世界を先につくりあげるってこともあるのだけど、うたの人がピアノの音色を変えるっていう魔法?実際そういう箇所もあって、そういうひとつひとつの発見がうたとピアノという二つの楽器をひとつにしていくんだなと、改めて現場で感じました。
さて、昨日の続きで、バッハについて!
大バッハに最も溺愛されたことで知られるヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(1710-84)は、即興演奏が得意な、才能に恵まれた音楽家でありました。大バッハが彼の教育のために「二声のインベンション」「三声のシンフォニア」等の、現代のピアノ教育でも基盤としてもちいられる教材をつくりあげたことはよく知られております。そんな恵まれた環境でありながら、父の名声に固執してしまい、不安定な人生であったそうです。11日の公演で弾きます彼の「ファンタジーホ短調」にもそんな不安定さが影響していますが、それが逆に彼の「味」となっているともいえるでしょう。器楽的な旋律と、オペラ風の書法、それがいったりきたりめまぐるしく変化していきます。1770年代に作曲されたことを考慮にいれ曲を概観すると、彼の頭にあったのはおそらくイタリアの響きとチェンバロのもたらす効果だったのではないかと思います。
かたや彼の弟カール・フィリップ・エマーヌエル・バッハ(1714-88)は、20年以上も勤めていたフリードリヒ大王の下を離れ、新天地ハンブルグという港町に自由の精神を求めました。ハンブルク期の代表作として「識者の愛好家のための曲集」が挙げられますが、その中の「ロンド変ロ長調」(6月11日)、「ファンタジー変ホ長調」(6月15日)を演奏会で取り上げます。彼の作曲はとても大胆で奇想天外、次になにが来るんだろうというワクワク感たっぷりの音楽です。大胆な転調、感情を露にした表現、急激な場面転換など、より人間個人の感情を情熱とともに表すことに重点が置かれています。フォルテピアノのメカニックや音色は、まさにエマーヌエルのこれらの作品を弾くときに絶妙な表現を可能にしてくれます。
このように18世紀後期のドイツでは、音楽が宮廷だけのものという認識から少しずつ離れ、一般の中流市民が家庭やサロンといった私的な空間で音楽を楽しみ、また当時の啓蒙思想とあいまって音楽がそのものがその思想を伝達する媒体となったのであります。
次回はベートーヴェンについて!
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