フォルテピアノ奏者 丹野めぐみ BLOG。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業後、オランダ初めヨーロッパ各地にて研鑽を積み、同地にて活躍。現在オランダでもっとも権威ある「De Nederlandse Opera」のメンバーとして参加、また「Amsterdam Barok Opera」にて活動の場を広げるとともに、ヨーロッパを中心に、室内楽とドイツリートの分野で精力的な活動を行なっている。

演奏会前のティータイム(4) ベートーヴェンのピアノ・ソナタ

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 今日は本番のピアノで三浦さんと練習!息はもともとあっているので、すんなり音楽に入っていけます。昨日とはまた違ったアイデアが浮んだりして、面白い!
 

 今日はベートーヴェンについて!ベートーヴェンが生涯にかいたピアノ・ソナタ32曲は、「新約聖書」と呼ばれるほど、クラシック音楽の中では一際異彩を放つ名作なわけですが、その所以は、ベートーヴェンの生きた時代のスタイル、ピアノという楽器の変遷、そしてベートーヴェンが音楽になにを求めていたのか、その彼の哲学が一音一音ずっしりと読み取れることだと思います。

 ハイドン、モーツァルト時代の「シュタイン」や「ヴァルター」といった楽器の音域は現代のピアノより小さく61鍵が支流でしたが、ベートーヴェンの時代になると、ピアノの発展はより大きな変化を迎えることとなりました。19世紀の市民階級が経済力を蓄えてピアノを所有することの欲求に拍車をかけ、この産業化社会の幕開けが後のピアノ製造業にも大きな影響を与えることになったのです。この枠組みのなかで考案された技術は、常に音楽家と社会が求める音楽と連動してピアノ製造に刺激を与え、作曲者はこの自分のためにつくられた新型ピアノを前にさらに意欲がかき立てられたのでした。

 11日演奏するピアノ・ソナタハ短調は、かれの初期の作品であり、「ヴァルター」での演奏は、ベートーヴェンが意図したであろう、直接的な激しさと、「モデレーター」(膝で操作するペダルで、「押し上げる」と弦の下にフェルトがはさまり、小声で話しているかのような音量になる)で表現する非現実的な音色が交互に現れる、べートーヴェンらしい、ハ短調です。

 この作曲の後、1800年を過ぎてもなお、ピアノの未知なる可能性について常に考えていたベートーヴェンは「ピアノが楽器のなかでもっとも遅れており、ハープのような音がする」と、もっとも信頼を置いていたシュトライヒャーという製作家にもらしています。彼の向上心を煽るように、イギリスやフランスの楽器製作者からピアノが贈られたことで、ベートーヴェンは常に刺激され、彼独自の境地を32曲のピアノ・ソナタの中に見出したのです。

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