さてさて、毎日連載していおります、「演奏会前」も今日で4回目!今日はモーツァルトについて!
1787年、モーツァルトは31歳を迎えていました。ウイーンでの生活は悪化の一途を辿っておりましたが、彼の生涯の中でも最も苦しいこの時期に連弾の名曲「4手のためのピアノ・ソナタ ハ長調 KV521」が生まれました。モーツァルトは現存するだけで5曲のピアノ連弾用ソナタと一曲の変奏曲をかきました。堂々としたなかに表現される透明感、繊細かつ綿密に作り上げられている構成の美しさ、そしてそれらがシンプルに配列されていることも、KV497ヘ長調とならんで、名曲といわれている所以だと思います。
モーツァルトの連弾曲は優雅な美にあふれている作品群ではありますが、今日の演奏会で頻繁に取り入れられることはあまりありません。「連弾の世界」は、その音楽がもつ極めて親密な2人の奏者のやり取りが感じられる距離、空間での演奏が望ましいので、今日の商業べースの演奏会ではなかなか難しいところはあります。そこにあえて挑戦するのは、私達Tempo Rubatoがフォルテピアノという楽器を選んで、当時の考え方、音楽のあり方、その背景などをよりよく理解しようとしたうえで、そこに私達が紡ぎだせる世界を反映させようとすることの面白さのとりこになってしまったから。フォルテピアノを用いると、ピアノ弦の張り方が「平行弦」(モダンの楽器は交差弦)のために、低音の一音一音がクリアに聴こえ、2人の奏者の「音の対話」がはっきりと描き出されます。またフォルテピアノは、音域によって異なった音色を持っているので、この「対話」により色彩をもたらすことができるのです。楽器自体の音量の幅はモダンのピアノに比べて小さいですが、当時の楽器(またはレプリカ)を用いることで、作品の中にもとめられたコンテクストの中の「フォルテ」や「ピアノ」という物理的な音量の変化を超えたレベルで、音楽をより鮮やかに奏することを可能にするのです。
どちらの楽器がよりいいかという聞き方ではなく、それぞれの楽器がもっている特性に耳を傾けていただき、新たな音の冒険をしていただければ幸いです!
写真は、先月ブリュージュでの感動したコンサートの後、打楽器奏者Massimo Laguardiaさんと!いやはや、「サルディーニャ島の教会音楽」のパワーに開眼!4人の歌手の太い声と、この世を隔てる不思議なハーモニーに度肝を抜かれ、癒されました!Cuncordu de oroseiの「miserere」聞き惚れています!
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