フォルテピアノ奏者 丹野めぐみ BLOG。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業後、オランダ初めヨーロッパ各地にて研鑽を積み、同地にて活躍。現在オランダでもっとも権威ある「De Nederlandse Opera」のメンバーとして参加、また「Amsterdam Barok Opera」にて活動の場を広げるとともに、ヨーロッパを中心に、室内楽とドイツリートの分野で精力的な活動を行なっている。

一代限りの芸術

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 毎日いろいろなことが起こります。今日はなんといっても衝撃だったのは、毎日フランス語講師の梅本洋一先生が最近旅立たれてしまったこと。。。お声の感じからしてもまだお若い感じでしたし、「エレオノール」と呼びかける感じがなんともお優しい感じでした。私はフランス語のことはあまりわかっていないけど、先生があまりに情熱をこめてフランス映画のことをお話になる、あの感じに引き込まれ、半年間頑張って聞いていました。そして今日久々にサイトを開けてみると、信じられない記事が目に飛び込んで、本当に本当にまだまだフランスのことや映画のことを多くの人に語りかけたかったに違いないし、そう思うと、あの今月いっぱいのラジオ放送が、本当に先生が遺してくれた芸術なんだと、そう思ったら胸が熱くなるのでした。このラジオ放送に込められた魂の重みを改めて知りました。

 そんなことを思って、今日も野口体操にいってきました。野口三千三先生だけが成し得た芸術。一代限りの芸術。私は先生にじかにお会いしたことは残念ながらないけれど、先生の記録であるラジオ放送とか、そういうものにふれると、その声、その振動、その鼓動から伝わってくるもので、イメージができて、少しずつでも自分の内側の何かが変わっていくような気がします。だから、やっぱり偉大な人の生の声、思想に触れることはすごく多くの気づきをもらいます。いつもは発信する立場ですが、今日はふたりの巨匠のことを考えながら、ただゆらゆらと身を任せていたら不思議といつもより身体が楽になったというか、感覚がつかめたような気がしました。運命の不思議、人生の不思議。そして、誰しもがかけがえのない芸術なんですね。あらためてそう思いました。

 演奏家もそうですが、「記録」は遺すことができる。ただ、その人がやったことは、やはりその人一代のものでしかない、ただそれ一代で終わらしてしまうにはあまりにも尊い。そしてどうしようもなく魂をゆすぶられたら、おのずと受け継ぐように身体が反応してしまう。だから、やっぱり受け継ぐ。なにか周りの人のためになるんだったら受け継ぐ。。。

 写真は、ウイーンのオペラ。たしか、フィガロの結婚をみたときだったと思います。ここでも多くの音楽家の夢がかなえられ、そしてはかなくも消えていったのでした。。まるでモーツァルトの音楽のように、上品で長く味わいたいけど、気づくともうあの夢のような瞬間は消えているような。。それこそがモーツァルトのマジックなのかな。

 

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