フォルテピアノ奏者 丹野めぐみ BLOG。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業後、オランダ初めヨーロッパ各地にて研鑽を積み、同地にて活躍。現在オランダでもっとも権威ある「De Nederlandse Opera」のメンバーとして参加、また「Amsterdam Barok Opera」にて活動の場を広げるとともに、ヨーロッパを中心に、室内楽とドイツリートの分野で精力的な活動を行なっている。

演奏会前のティータイム(3)ベートーヴェンとヴァルトシュタイン伯爵

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 夜になると随分涼しい風が吹きますが、PCの前だとやはり暑い。。皆様いかがお過ごしでしょうか?

  今日は「ベートーヴェンとヴァルトシュタイン伯爵」の友情について。 

 ベートーヴェンはモーツァルトに憬れて、音楽の都ウィーンを目指したわけですが、1792(22歳ころまで)年までは故郷ドイツ・ボンの宮廷楽団でヴィオラ、チェンバロ奏者としてその手腕を振るっていました。このころ劇場で行われていた「ドン・ジョバンニ」や「後宮からの逃走」に触れていたわけですから、モーツァルトを心底知りたいという欲求はどんどん高まるばかりです。
 この時代、彼のパトロンであったヴァルトシュタイン伯爵は、1805年にベートーヴェンが献呈したピアノ・ソナタ作品53で、その名を知られておりますが、実はこの方、ピアノも相当な腕前だったといわれております。伯爵が主題を提示し、それを即座にベートーヴェンが変奏を加えながら楽しむということが行われていたということは、この「ヴァルトシュタイン伯爵の主題による8つの変奏曲」からも読み取れます。親密な友情から生まれたであろうこの曲は、「家庭で楽しまれる連弾曲」というスケールをはるかに超えた、技術的にも音楽的にも高度な芸術作品です。しかし、最後にベートーヴェンが一瞬みせるほほえみは、彼のあの音楽室にあるいかめしい顔つきとは逆の、ウイットに富んだ温かみのある優しさを表しています。

 1792年10月、「モーツァルトの魂をハイドンの手から受け取るのはあなたなのです。」といって若いベートーヴェンをウィーンへ送り出した伯爵の気持ちを考えると、壮大なヒューマン・ドラマを思わずにはいられません。

 ちなみにこの写真は、先月ブリュージュで行われた楽器展示会にあった、ポール・マクナルティー作のシュタイン・モデルのフォルテピアノです!鳴りがよく、はっきりとした輪郭を描きやすい、すばらしい楽器でした!横浜での演奏会も、製作者は違いますが、「シュタイン・モデル」を使います!

 明日はモーツァルトについて!

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