フォルテピアノ奏者 丹野めぐみ BLOG。東京芸術大学音楽学部楽理科卒業後、オランダ初めヨーロッパ各地にて研鑽を積み、同地にて活躍。現在オランダでもっとも権威ある「De Nederlandse Opera」のメンバーとして参加、また「Amsterdam Barok Opera」にて活動の場を広げるとともに、ヨーロッパを中心に、室内楽とドイツリートの分野で精力的な活動を行なっている。

September 2009Archives

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 ついに、明日に公演が迫りました!やれるだけのことはやったので、あとは楽しんで演奏できたらと思います。

 今日で一応最後になりましたが、「演奏会シリーズ」を読んでくださってありがとうございました!
 最後に今日のリハーサルでは、アジア初演になるラウッツィーニとジョルダーニを主にとりあげましたが、これがまた今までやってきた連弾の「仕方」とはぜんぜん違う。アントニオにとっても、きっとこれらの曲を「おもしろく」弾くのは、容易ではないはず。。きっといろいろな手法を試したのだと思います。だって、モーツァルトやベートーヴェンみたいに曲の中にいろいろな要素が詰まっているのではなく、楽譜はいたってシンプル。そして「アレグロ」という表記でセコンドパートは、16分音符ばかり。それを派手にがちゃがちゃと弾いていたら、「それでは一方向すぎるよ、イタリア音楽はもっと「予想外」のことがおこらなければだめだ」と言われ、なーるほど!基本になっているものが違う。すなわち「オペラ」が基本になっているので、プリモパートの旋律は「歌」でなければならず、そのシンプルな楽譜から、たくさんのことを読み取って、表現していかなればならないんだと。だからその「歌」をうまく導きつつ、自在なテンポで音楽を明るく、そしてまた時にはもの悲しく語ってゆく。そしてチャーミングな3度の動きがいたるところちりばめられいて、それも高らかにプリモとセコンドで、まるでオペラの二重唱のように奏でると、急にまた音楽がふわっと出てくる!

 最初は、「アレグロ」というテンポなのに、随分遅いテンポをとるんだなとおもったのですが、これだけいろいろなことをやろうとすると、ただのマシーンのような16分音符の羅列では、この「歌」を導くことはできないのであります。しかし、アントニオのやろうとしていることは大胆なので、なかなかこういう風に公で弾くっていうことは勇気のいることなのですが、私たちの「テンポ・ルバート」は読んで字のごとく、「テンポを盗む」すなわち「楽節の速さを遅くしたり早くしたり加減する」ことで、より音楽を鮮やかによみがえらせることに主眼をおいているので、この点でも、従来の連弾とは違うといえるでしょう!なにか新しいことを(でも、私たちの場合は歴史の裏づけをもってやっているので、ただの「フィーリング」でこれを決めているわけではありません。これを「演奏実践」といってちゃんと当時の(この場合は18世紀の)文献に基づいておこなっています)やろうとすると、それにはリスクがつきまわりますし、従来のものとちがって耳になじまない(私もこの「イタリア」の作品たちにはなじめない日々が続きました。。)ことも起こりえるかもしれないですが、明日は、どうぞ、なにか新しい発見というか、「音の旅」にでかける気持ちでご来場いただければ誠に幸いです! 
 私たちもわくわくしております!では!今日という一日を大切に、感謝を込めて弾こうと思います!

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 はてさて、やっとすこし落ち着いてきましたが、無事アントニオ氏も来日し、コンサートの準備も着々と整いつつあります!
  今日のリハーサルで、ベートーヴェンのウイーンでの恩師、アルブレヒツベルガーのフーガにとりかかっていたところ、「めぐみの演奏は音がハッピーすぎるよ」といわれ、なんのこっちゃと思っていたのですが、「ハッピーを表現するのに、イタリア人の仕事が早くおわってハッピーというのと、ドイツ人の「さあ仕事だ、はりきってやろう!」という気質からでてくる音の方向性は全然違うよ!」と言われたときに、ハッとしたのであります。きっとオランダに暮らしていた時は、生活がそんな感じなんで、自然とできていたこともあるのでしょうね。そういう面でもヨーロッパ人といっしょにお仕事させてもらうっていうのは非常に刺激的なのであります。だから、このある意味「ドイツ人的」フーガも「音はもっと重めにとって、厳格に、表現しなきゃならない、笑顔はこころのなかだけにしときなさい」といわれ、そういうことを気をつけていくと、なんだか音楽が香水のようにそれぞれの曲にあったスタイルで立体的に立ち上ってくるのであります。
 この「連弾」という芸術は、もちろん、前回もすこし書いたように手のポジションとか制約が多い中で、いかに二人のエゴを、一つにまとめていくか、という、かなり高度なことを求められるのですが、人間の創造力っていうのはどこまでもすごいなと、あらためて認識させられる今日このごろ!前よりもかなり息があってきたなと感じるリハーサルでした!

 

人とのつながり

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 う~んどうやってもあと、30分はかかりそう。。
ブリタの水は取り替えたし、あとはこれを植木にかけて(アントニオ氏が教えてくれたのです。ブリタを取り替える時の水は、植木にいいと。。彼はしかもペットボトルにちゃんと保存してた。。)。。そして玄関掃除したらOK!

 明日、来日してくれちゃいます!ミスターピリコーネ。昨日も、朝の4時から5時までスカイプで、「チョコレートいる?よね?」という用件。。知らない間にミラノにいるし。。
 
 またいろいろなことが起こる2週間だと思います。

 そして、今日、夏からしていた仕事の一区切りで、なぜかとてもキュッときたなあ。やはり先生方もよかったし、生徒さんたちも良い子揃いで、私もいつも楽しんで若者のエキスをいただけたし、その発想の柔軟さやおもしろさは、なんとも温かい気持ちになり、励まされました!ありがとうございます!

 とりあえず、明日、遅刻しないように成田です。(去年は大雨で一時間遅刻。激怒してた(笑)。。もちろんだけど。。)

 そしてまたリハーサルからいろいろ音楽がもっと見えてくるとおもうので、あとの2回の連載はリハーサルのことについて書こうかなと。とりあえず、就寝までもうちょい!

  はてさて、時よとまって!と思うほど無常にもさらさらと流れていって、毎晩かなりギリギリのラインで戦っています。
  
  今日は横浜の非常に有意義なレクチャーに朝から参加!ねむいのなんか、ぱーっと吹き飛んで、佐々木先生のお話に集中した2時間でした。日本人でありながら、あのような切り口で西洋音楽を体得しようという、その心意気と真摯な気持ちに感動したのであります!その内容はまた今度アップできたらしたいなと。私なりの言葉でまとめる時間が必要です!
  この「ティータイム連載」も後半になりました!今日はタイトルだけじゃ?なんですが。。
テンポ・ルバート公演のプログラムで、「アジア初演」を含む、「イタリア系」の3曲ですが、弾けば弾くほど「3度」がいっぱい登場!「3度」とは、たとえばド音を弾いた時、3度上に音を重ねる、つまりドから数えて「ミ」の音、このように「3度」がなぜかとても多い!その理由はもうすぐ来日するアントニオ氏に尋ねてみるとして。。

 ラウッツィーニとジョルダーニは、基本的に奏者二人にこの「3度」が振り分けられている(例えば、セコンドの人が「ドレミレド」と弾いたら、プリモは「ミファソファミ」と旋律をうたう)のだけど、ピアノのテクニシャン、クレメンティ先生の楽曲(プログラムの一番最後に予定している曲)になると、そうはいかない。。この「3度」の重音がおのおのの奏者にあるので、より華やかではありますが、技巧的には難しいのであります。しかも合わせるのは容易ではないと、いまからすこしドキドキしているのであります。

  このクレメンティ、歴史の妙とでもいうべきか、かのモーツァルトと「演奏試合」をしているのであります。時は1781年12月24日クリスマスイヴ。場所はウイーンのホーフブルグ宮。モーツァルトは25歳であり、クレメンティは29歳の時の出来事です。結局ジャッジをした皇帝ヨーゼフ2世によって、モーツァルトが勝者となるわけですが、モーツァルトいわく、「クレメンティは優れたチェンバロ奏者である。右手が器用でお得意は3度であるが、ほかには何も表現しない職人である」と辛口の批評ではありますが、「3度」の達人であったことはこの文からも伺えます。のちのベートーヴェンにいわせると、「モーツァルトのピアノソナタよりもクレメンティのソナタがいい!」とか、まあいろんな意見があるのですが、私達がとりくんでいるハ長調の明るい4手用ソナタ、とくに終楽章のテンポのなかで、どのような「3度」が聞こえるか、よ~く耳を傾けてみてくださいね!私もいまからわくわくしているのであります!

音楽家っていうこと

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 今日は、連載は明日に回すとして、今日いった演奏会の感想!

 今日ご招待いただいたのは、「中村健佐さんの浜離宮コンサート」でした。プロストリートミュージシャンというからには、結構ガンガンやるのかなとおもったら、すべて癒し系の曲で、またピアノの田口さんという方のピアノがめちゃくちゃうまいし(シンセもよかった!)、息のあったDUOをきけて、心からリラックスできた一時なのでした。会場全体も、普段のクラシックのコンサートより落ち着いた雰囲気でした!
 浜離宮を埋め尽くすお客様をみて、「どうしてそんなにたくさんの人のハートをつかめるのか」ということを、ちょっと考えたりしたのですが、音大を出て、まじめ~~に「お勉強」、そしてなんとか門下のどーのこーのという感じで音楽をやってきていない分、やはりマジョリティーの気持ちを鷲づかみにしやすいのかな。みんなが入り込みやすい音楽を、ニーズにあったものを提供されているなと。演奏も、「自分らしさ」というのがあってとてもよかったと思います。お客様とのコミュニケーションも大事になさっている印象がありました!
  音大はいる前には、みんなそういう気持ちもっていたと思うのだけど、勉強していくと、「勉強」になっちゃう??でも音楽は感性のものだし。。??でも特に私のやっている「古楽」という分野では、研究が基本だし。。ううー。。コンガラガル。。今日のピアニストの方は、クラシックが基本にありながら、かなり柔軟にいろいろなことが出来る人の音色や音の滑らかさに、すばらしいセンスが光っていました!
 なんにせよ、お客様と一体になれる音楽会、そういうのを目指してがんばるのであります!私のやっていることは、研究結果を最後はちゃんと感性で伝えられるようになるまで追い込んで、ろ過していくことなのかな。明日はちゃんと連載続けられるはず。(ネタはあるのですけど、ちょっと時間が欲しいです!)

 はてさて、今日も上野、東京、京橋、有楽町。そして今やっと落ち着いた時間を取り戻しています。今日は私を古くから良くしてくださっている方々に会えて、なんていうか、この精神が磨り減っている中、10年以上もの変わらぬ友情を傾けてくれると、ホッとするというか、この世でもっとも大切なものを思い出させてくれるので、また気合が入ってきました!

 今日はちょっとベートーヴェンについて。
 私のこのサイトをみてくださっている方々はすでに察してくださっているとおもいますが、私、ベートーヴェンにはどうも特別な感情が入ります。誕生日が近いから?それもそうかもしれないけど、きっと、彼の音楽から察するに、あのクライマックスまで人をひっぱっておいて、ヒュッとかわしてくれるところなんか、なんとも人間的というか、シリアスな一面と、ユーモラスな一面がおもしろいように混じっていて、私自身もそういう二面性をもっていると思うので(自己の判断はあてにならない?)なにか惹き付けられてしまうのであります。

  今回の演奏会では「ヴァルトシュタイン伯爵のテーマによる8つの変奏曲」をとりあげますが、まあ、ひとことで言うと、百面相!いろいろなキャラクターが詰まっているので、タイミングや間のため方など、そのキャラクターを「演じて」しまうと、逆におもしろみがないのかも。アントニオ君と私は、お互いもとからころっころ気性が変わりやすいので、たぶんそういう意味でもこの曲は、私達のデュオならではの味付けになるのではないでしょうか?
  
  このヴァルトシュタイン伯爵、音楽やっている方ならかならず知っているあの曲! ベートーヴェンの中期のピアノ・ソナタの中でも傑作である作品53のソナタを献呈された方であります。が、意外な事実は、この伯爵、かなりのピアノの達人であったのであります。おそらく、この曲は伯爵が最初に「ほら、こんなテーマつくってみたよ!この先はよろしく!」みたいな感じで、ベートーヴェンに託されたのではないかと推測するのです。そしてきっと仲むつまじく連弾していたのではないかしらん?と想像をめぐらせて楽しんでいる今日この頃。。しかし、これは明らかに「家庭用」連弾曲をはるかに超えた難しさなのであります!なぜって?まず、プリモ(高音域)奏者とセコンド奏者(低音域)の「弾きにくさ」、つまり、手が重なるパーセンテージが高いのであります。しかも一瞬でも鍵盤に長くいすぎてしまうと、相手が打鍵する時には、まだハンマーが定位置に戻りきれてない=すでに時遅し。。=音が出ない!=ちょっと気まずい雰囲気。。なんてことにもなりかねないのです。。むんん。。だから、こんな曲を書くわけだから、よほどの友情関係が伯爵とベートーヴェンの間にはあったのでしょうね。ベートーヴェンがウイーンへ向けて出発する際に、「モーツァルトの魂を、ハイドンの手から受け取るのはあなたなのです」という、音楽史上、もっともドキドキするようなことを言える伯爵も、きっとすばらしい人格の持ち主であったと思います。

 この曲はハ長調という明るいチャーミングな調でかかれていますが、途中一瞬暗くなります。ハ短調という調性は「運命交響曲」なんかを想像していただくとわかるように、とても劇的な、しかもロマンティックな調べを含んでいます。そこからカプリッチョ=気まぐれなという意味が転じて「奇想曲」なんていう指示をしてきたりして、急に自由な楽想へ、そしてあとは、一気にクライマックス!なのだけど、最後にベートーヴェンが見せるウイットは、音楽室に貼ってあるあのいかめしい顔つきの彼ではなくって、さぞかしよくモテたのだろうなあということが想像つくような、まるでウインクでもされているかのような締めくくりなのであります!乞うご期待!
  

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 ふう~~、今日も、品川でリコーダー奏者のRちゃんと5年ぶりにちゃんとトーク。元気をいただいてから、新橋。三徳堂に入るやいなや、共通の知人がいる方に遭遇!すっかり意気投合。その後もまた他の方とお知り合いになれて、コンサートのチケットをいただいたり。。まあ、時間があっという間にすぎて、上野へ。そう、今日はやっと大学の先輩である小島夕季さんのジャワ舞踊をみることができたのであります!ガムランの優雅で幻想的な響きに導かれ、低音高音自在な歌が入り混じり、そこにルバーブの不思議な旋律が登場するという、なんともいえないいろいろな音の混合で、それはきっと「万華鏡」にたとえたら一番わかりやすいかな。
 小島さんの優雅で力強く、ピタっと静止した動きに、首から上のなんともいえない動き。手の先まで洗練されて無駄がなく、それでいて、艶かしい。西洋人にはない動きと色っぽさに、もう感動の拍手喝采を送りました。また演出もすごく素敵で、始まりも5時からだったのですが、上野水上音楽堂に静かに夕暮れが訪れ、そこに鈴虫の声が響き渡り、水面が揺れ、また踊り手の衣装からすこしづつ落ちてくる花びらはやがて一面に広がってなんともいえない、この世の感じじゃないムードが漂っていました!
 小島さんの踊ったあとのコメントで、「踊ったあとで頭が真っ白なのでお話するのが。。」とおっしゃっていた時に、ハッと思ったのであります。プログラムノートにもありましたが、ジャワの踊りの根幹はきっと、「祈り」の音楽。自分というものをすでに忘れ、宇宙とつながる「媒体」として、天空に自我を放っていく。この儀礼舞踏を通して「祈り」の気持ちを鍛錬していく、自分がまず空になり、そして媒体としてつながった時、きっと「よい気」をあたりに満たすことができる。この「気」が邪気を清め、宮廷、ひいては世界を平安に導いてゆく。。

  さてそこで、今度のコンサートでお聴きいただきます、モーツァルトの「幻想曲KV608」の中間部にあるアンダンテを思い出したのであります。
  この曲自体は、モーツァルトに死の影が忍び寄る最晩年の1791年に作曲されたものですが、モーツァルトの親交の深かったダイム伯爵が、1790年に他界したオーストリアの国家的英雄を追悼して、一風変わった時計仕掛けの自動オルガンを作り、それに夢中になったモーツァルトがそのオルガン用に3曲、作曲したのであります。そのうち最も内容の濃いのがこのKV608で、荘厳なヘ短調という重々しい雰囲気で始まるのですが、平行調の変イ長調の甘い調べが中間部にでてきます。でもそれは単に甘いという言葉では言い表せない、モーツァルトの過ぎ去った日々を思うせつなさ、そしてそれがもうすぐ天上のものになってしまうという、それをすでに想定して、なんなく受け入れてしまっているモーツァルトの、心の平安を歌った調べであることに、今日のジャワ音楽を聴いてピーンときたのです。ガムランが奏でた音の根源といっしょで、やはり古今東西、最終的には「祈り」に行き着くのだなと納得したのであります。
 ちなみに、この曲はアントニオ君がプリモです。(昨日登場したワードですね!)つまり彼が、この究極のメロディーをつむいでいくことになります!乞うご期待!

 

 モーツァルト一家肖像画.doc 

 

 はてさて、私の作業がたいてい夜遅いため、明日アップしますよっていってから、ちょっと時間遅れた感がありますが、お許し下さい。

 今日から連載で、「テンポ・ルバート」アントニオ・ピリコーネ&丹野めぐみ公演に際しまして、ちょっと事前に知っていただけたら楽しいかもという情報を書いてみますね。ではでははじまりはじまり~~

 今日掲載した絵は、業界ではとても有名なもので、「モーツァルト一家」の肖像画です。「ピアノ連弾」=一台のピアノを二人で仲むつまじく(これがなかなか難しい。。理由は後述)高音部と低音部に分かれてまるでひとりで弾いているかのよう奏でる。このジャンルを一躍有名にしたのが、そう、このモーツァルトと姉のナンネルのペア。姉も相当なピアノの腕前をもっていて演奏旅行でも一緒だったこともあるし、また「連弾」というジャンルは先生が音楽を弟子たちに教えるときにも非常に有効なエッセンスがつまっているため(例えば先生といっしょに弾くことで、生徒もノリノリで弾けちゃうとか、先生が弾いたものを、音楽の中で「真似る」ということが自然に行われやすく、生徒が習得しやすいとか。。)、モーツァルトは5曲のピアノ連弾用ソナタと、1曲の変奏曲を書いたのであります。
 
 がしかし、、このような珠玉の名作たちは、なかなか現代の商業ベースの演奏会に向かないのが現状であります。なぜって、いかに技巧的な作品であっても、このような音楽の持つ本質は極めて親密な二人の奏者のやりとりであり、当然のことながら奏者の呼吸が感じられる空間での演奏が望ましいのです。なのであまり演奏会で「連弾」だけをとりあげることは、まあ、世界的にみてもそんなに多くはないことなのです。(日本は特に協調精神を大切にするから、このジャンルに力を入れている人がかなりいらっしゃることは最近知りました!)
 
 さて、さらにもうすこし突き詰めていうと、フォルテピアノという楽器の性能とも関係してくるわけですが、「連弾」は基本的には、「対話の芸術」ということがいえます。なぜこの時代の音楽をこの時代の楽器=フォルテピアノを使うとさらにうまくいくかというと、現代のピアノは低音部が交差弦なので、音が混ざり合いやすく、これらの時代の連弾曲に多用される音型を弾くと重たく響きすぎてしまうわけで、高音部のメロディーや各声部の対話を描きだすのは至難の業となるわけです。一方フォルテピアノは平行弦なので、低音が一音一音クリアに聞こえ、各奏者の異なった音域で紡ぎだされる旋律が、「対話」として聴き取りやすくなるわけです。またフォルテピアノは音域によってカラーが異なりますので、この対話に、より強い色彩やキャラクターを与えることにもなるわけです。この辺がフォルテピアノで聴く連弾の醍醐味ではないかと思います。
  
 がしかし、(何度もすみません)。。フォルテピアノは鍵盤数が現代のピアノよりもかなり少ないため(モーツァルト当時のピアノは5オクターヴと数鍵がプラスされていた小さな(今のものと比べると)ピアノだったのであります。ということは!二人の奏者が隣あわせになっただけでも、スペース的にかなりしんどいわけで。。そして奏者二人のタッチをそろえるとか、そういう問題もあったりするわけで。たとえばこの「肖像画」をみていただいても分かるように、モーツァルトと姉ナンネルの手首あたりに注目していただくと、例えばタイミングをそろえたい時なんかは、このような小技をきかせて「手首を重ねる」ことで、二人の手がまるで一人の手になったような感覚を利用して音を切ったりするタイミングを合わせていったりするのです。
 
  また同じ楽器同士はエゴもぶつかりあいやすく、(この点では他の楽器とのアンサンブルのほうが楽だとはいえるでしょう)とくに、フィジカル的に接近しているので、高音部を担当する(「プリモ」といいますが)人の左手と、低音部を担当する(「セコンド」)人の右手とが、まあかなりの割合でかさなり、どっちかが一瞬でも長くステイしてしまった場合、次の音をとる奏者が飛び込んできたりすると、ちょっと血がでたり(大げさかな)すりむけたりすることもあります。(特に小指あたり)ご注意を。

  そんなわけで「連弾の心得」は、自分のパートに「いつ」目立たせなければならない旋律が与えられているのかという構造の把握、そしてそれ以外はひたすら「相手に譲る」という忍耐力、そして「相手の心と指」になりきって、いつ自分が退いたらいいのか、どのようにその引き際を見極めるのか、といった、「相手の一挙一動を深く観察する能力」の有無が問われる、非常~に奥深いジャンルなのであります。そして、そういう工夫、営みのなかで相手をよりよく理解するということができる!なんて啓蒙主義的な芸術でありましょう!(笑)

 最初ッから気合が入りすぎちゃったみたいです。明日はもうちょっとプログラムについてご説明いたします。

 

明日より

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 今日も東京を一周。追われる生活の中、ちょっとした生活の変化や、思いもがけない出会いは、心を豊かにしてくれます!9月30日のコンサートに向けて、すこしずつ準備が整ってきました!
 明日から、このブログを使ってやりたいこと!それは「コンサート前のティータイム」とでも申しましょうか?アントニオ公演を聴いていただくための、ちょっとした予備知識を6回連続で続けていきたいと思います。これを読んでからご来場いただくことで、さらにグッーーっと音楽の深みにハマッていただれば幸いです!
 ただし音楽は「ナマモノ」であり、しかも他人がどーのこーの言うことができない、個人個人の神聖なところに関与することでもあるので、あくまでも私の意見というよりは、歴史的事実を述べていきたいなと思っています!ではでは!

クリス氏と

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 今日は目白へ練習のあと、時の人、クリスチャン・べザウデンハウト氏と赤坂でトーク。NHK交響楽団とのツアーを終えて、疲れているだろうに、紳士でした。やはりスターになるにはスターの気品と風格というのがありまして、お話の中にも彼の頭の良さ、芯の強さ、自分のやっていることの絶対の自信、そして最後には必ず謙虚という、すべてが揃っているなという感じでした。これからも古楽界をリードしていくだろうし、世界を作り変えていく人というのは、あらためて同じ雰囲気が漂っている!!とても刺激的なひとときに心から感謝いたします。やはり自分の考えをクリアにもって、大切にするというのはとても重要なことだなと。それが簡単にひっくりかえるようではだめなんだなと。それは意地とかそんなんじゃなくて、もっと高次元のレベルで行われなければいけないんだなと。。。人間はおもしろい!

ベートーヴェンのウイット

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 はてさて、今日は曇り雨のなか、昨日フォルテピアノ練習の目白スタジオで運良くお会いできた時の人、クリスチャン・べザイデンハウト(彼の名前の発音は、とても難しい。。)さんからご招待いただいたN響の横浜公演に行ってまいりました。音楽を生で聴くのって本当に快感!日常からかけ離れた世界へ導かれて至福の時を味わいました。
 指揮のホグウッド氏の弾む身体性に注目すると、まあいろいろなことが見えました。彼の手からつむぎだされる自由自在な音楽が、クリスのピアノとうまく絡まった4番。モダンのピアノからはなかなか聴こえないような「ベートーヴェン用」の丸い丸い音のタッチや、転調したときになんともいえない幽玄なウツロイを醸しだしてくれるのは、やはりクリスがいろいろな鍵盤を知っていたり、歴史的に裏付けられたたくさんのことをちゃんと自分の言語で噛み砕いているからなんだろうなと。。
 そしてN響の交響曲7番。特に、3楽章!あ~あの第二楽章から第三楽章へ移るときの、なんともいえない微妙な間がまたよかった!壮大な世界を見せ付けられたあと、あの、ユーモアたっぷりの3楽章、管楽器の使い方のうまさ!なんて人間的でありながら神々しいのでしょう!昨日、ちょうど注文した「ベートーヴェンの手紙」が届いたとこなので、そのなぞをもうちょっと自分なりに追いかけてみようかなという土曜の夜です。

 

一度目と二度目

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 いや~ふうう~~歩き回りました。
今日はホセくんと妹さんを見送りがてら東京駅周辺へ。
荷物を預けたあと、アキハバラへいくというので、いったんお別れ。PC周辺機器がまったくわからない私にはちょうどよく、まあ其の後何度電車を乗り換えたか。。あっちへいったりこっちへいったり。そしてまた夕方東京駅であって成田エクスプレスへお見送りした時は二人ともぐったり。そしてなんとなくあっさりとお別れしました。一度目の時は、なんだかあっちも初めての日本で、私も彼と日本で演奏会ができると思ってなかったから、なんとなく感極まったけど、二回目ともなるとヨーロッパの風のようにさらりと、ひょいっと、あっさりさようならできたりして、ちょっとなんとなく物足りない気もしつつ、出発する側と、見送る側では気持ちは随分違うよなと、自分自身を振り返ったり。。。精神の微妙なからくりを考えつつ。。

 さて、バシっっとここで切り替えて、アントニオ公演も近づいて参りました!今日の午後からやっとスケジュール切り替えていただきました!ご覧ください!

 9月3日付けの神奈川新聞に、写真つきの記事載りました。結構見てくださった方が多く、感動です!これからの毎日もまた嵐のようでもありながら、台風の目のように、なんとなく変に神経が研ぎ澄まされちゃった時のようなはりつめた静けさのなかで、もくもくと打ち込みます!

水墨画の世界

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 今日は一日かけて芦ノ湖めぐり。
ホセと妹さん最終日で、天候も不安のなかいってみたら雨もぎりぎりふらず、山間を流れる雲の群れもまたそれはそれで風流でした。しかも観光客もあまりいなく、極めて静かな、ゆったりとした時間が流れていて、心身ともに最近のストレスを清めてもらった感じです!ひさびさに(多分10年くらい前!)いった「山のホテル」の別館のお洒落なティーサロン、湖畔に面していて、これがまた丁寧なお料理や作り立てのパンとケーキでおもてなし。優雅なのにアットホームで、今日で4回目の訪問でしたが、一回ずつ貴重な時間を過ごさせていただいております!
 富士山がまったくみえず、残念だったけど、なんていうのか、静かな山一面を覆う深い霧が、なんとも幻想的で、本当に水墨画の世界でした!自然に帰るっていうのは、ひそかに苦手なことだったりするのだけど、身体が欲していると、意外にすんなり受け入れることができるんですね!こういう変化ってちょっとおもしろい!

怒涛の日々

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 9月4日のコンサート、無事終わりました!大盛況のうちに終えることができ、幸せな夜を過ごすことができました。これも皆様のお蔭です!本当にありがとうございました!

 オペラシティのリサイタルホールは、とても心地の良い空間で、お客様がどういう感じで聴いてくださっているか、空気を読みやすい場でした。大勢のお客様がびっしりという感じにステージからは見えましたが、それでもひとりひとりの感じがつかめて、溶け込みやすい雰囲気でした。

 毎回思うのですが、ひとりのお客様がいらしたらそれだけでとてもうれしいのに、「たくさん」というのは緊張するどころか逆に「うれしい」というモードになりますね!(だったらなぜ直前で緊張するのかという疑問もまあありますが。。。)

  私自身も初の試みで美食と音楽ということでどういうふうになるのだろうとわくわくしてましたが、裏からモニターで見ると、皆様楽しそうで、笑顔の絶えない会でした。(そこに出演10分前のホセくんがぬぼっと現れたりしているのにはさすがに「おいおい」と思ったけど、まあ本番がいいからOK.) 自分が思っているところの、理想の「音楽会」の形が確かにそこにはあったと思います。見知らぬ人どうしがいきなり音楽とか食とかを通して仲良くなったりとか、また一期一会のすれ違いであってもそれはやっぱり素敵なことだなっていうのを、みんなが共感しあえる場所をつくること。音楽会を開いて、毎回自分だけが「よかった」といわれることは、それはそれでとても有難いことだけど、この日本の社会の中で人がちゃんと息ができて憩える空間、そういうものをもっと作っていきたい!という願いのもと、かなり短いスパンで、ここまでできたことには本当に有難い気持ちでいっぱいです!関係者の皆様、そしてご来場いただいた方々には本当に本当に感謝しております!これからも進行形で、丁寧につくっていきたいなって思いました!

 自分の音楽を振り返ってみても、本番になったらちゃんと「見える」というか、これは非常に私の感覚の領域だから、言葉におこすのは難しいのですが、音楽が始まったら「スイッチをいれる」という感覚ではなく、「スッ」と音楽に溶けていくというか、溶けていくなかで、かなりはっきりと、タッチしようとする瞬間や、その後の音の感じも鮮明に「見える」というか。。だから、もっと心配せずに弾けたらいいのにねとおもったり。そこから先はメンタル力なんですが、これも徐々に底上げをしていけたらなと思います。やはりお客様のあの張り詰めた集中力と、こちらの感じがピタ!っと会う瞬間は、緊張の先にしか存在しない大切な聖域というか、そして其の中で演奏ということをしていくことは、自分のとっても好きなことなんだなというのがわかって、大変貴重な経験になりました!

 もうすぐアントニオ氏との公演もあるので、引き続き自分のマックスで挑みたいと思っています。よろしくお願いします!

 

 

 

感謝

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 すべての準備が終わり、就寝します。
今日という日を迎えるまで、たくさんのことがありました。でも!明日笑顔で皆様をお迎えします!そして明日という日を大事に生きることを、ちゃんとやり遂げたいと思います。
この日まで私を、たくさんの愛や優しさでつつんでくださった数々の方々、言葉ではいえないので、音楽で伝えられたらと心から思います。
 とにかく、明日(今日)という日を迎えることに、とても幸せを感じています!

ホセッチュ、妹と来日!

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 はてさて、今日も目白で楽器のご機嫌伺いをして、一度自宅に戻り、成田へ。いや~今日の練習でもわかることがたくさんありました!最初にちょっとひいただけで、昨日の練習がすでに楽器にちゃんと残っているというか、ノリウツッテいるというかなんというか。。ほんと、楽器が「生きている」って感触を楽しめることは、フォルテピアノをやっていることの醍醐味です。
 ホセッチュと妹さんは無事来日したものの、「本番まで別行動」らしく、成田でお別れ。太陽のような素敵な女性でした!さすがスペイン人!
 ついにあと1日です。やれるだけのことはやりました。あとは昨日の岩隈投手のインタビューで言っていたみたいに「本気」になるだけです。いや、すでにもうモードにはいっているので、そのまま登場できれば、それで十分幸せです。
 チケットはまだ若干残っています。お早めにご予約くださいませ!皆様と楽しい一時を過ごせること、楽しみにかつ大事に受け止めていきたいとおもっております。

 

チームということ

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 はてさてついに9月!ここからは音楽家としてたくさんのコンサートに触れたり参加したりすることになりそうです!体力的にはきつそうだけど、まあ、音楽からパワーをもらいながら、楽しんで、また楽しみを皆さんと分かち合ってやっていけたら幸せだと思います!

 今日は昼間に当日使う楽器で練習させていただいました!後半から音の感じがつかめて、自分のやりたいことと一致することができました。そういう瞬間は、なんとも言えずホッとします。

 その後、コンサートの打ち合わせで田町へ。ビアガーデンみたいな感じで賑わっていて、乾ききった身体にはまあおいしく感じました!今回ご協力くださるAさん、Mさん。半年前くらいにひょんなことからお会いしただけなのに、今回のコンサートをこんなに盛り上げてくださるなんて!ほんとうに夢のようです!「美味しいもの」をたくさん担当してくださるので、ご来場はできるだけ早くお願いいたします!
 明日はホセと妹が来日です!お迎えにあがります!

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